鹿の現状

鹿の現状

By 賢士松口

0 comments

 

エゾ鹿による被害額は断トツで大きい

エゾ鹿が害獣とされるのは、北海道全体の農林業被害のほとんどがエゾ鹿によるものだからです。

北海道庁が2020年にまとめたデータでは、農林業被害の80%がエゾ鹿によるもので、同年の被害額はなんと40億円を超えています。

 

鳥獣名

2020年の被害額

2019年の被害額

エゾ鹿

40億円7千万円

38億円

カラス類

2億7千万円

3億2千万円

ヒグマ

2億5千万円

2億2千万円

アライグマ

1億4千万円

1億2千万円

キツネ

1億4千万円

1億2千万円

出典:北海道庁環境生活部自然環境局 野生鳥獣による被害調査結果について(令和2年度分)

 

エゾ鹿による被害額が他の動物を大きく超えているだけでなく、被害額も年々増えていることがわかります。

 

エゾ鹿の特徴

エゾ鹿は体も大きく、食欲も旺盛です。

  • エゾ鹿の体長:子鹿は90cm

                 大人の鹿は最大で190cm

  • エゾ鹿の体重:メスの子鹿は25kg

                    大人のメス鹿は100kg

                         オスの子鹿は50kg

          大人のオス鹿は最大200kg

 

エゾ鹿は越冬に必要な脂肪を蓄えるために、秋には1日で2〜5kgの植物を食べると言われています。

さらに、エゾ鹿は強い繁殖力を持っています。場合によっては、一頭のメスが2〜15歳になるまでの間に、毎年一頭の子鹿を産むことがあるほどです。

北海道庁が行なった調査によると、2019年のエゾ鹿の推定生息数は67万頭でした。

 

エゾ鹿による害

エゾ鹿による主な害を紹介します。

  • 農作物や牧草が食べられる
  • 樹木の皮を食べたり、地面を踏み荒らすことで森林が荒らされる
  • 森林が荒らされたことによって生態系のバランスが崩れる
  • 森林破壊が原因による土砂災害が発生する
  • エゾ鹿と車の衝突による交通事故

    ※北海道庁によると、2021年に起きたエゾジカによる交通事故は4,000件以上。

  • エゾ鹿が原因による列車運行支障

※北海道庁によると、2021年度の列車運行支障件数は3,951件で過去最高値になっている。

エゾ鹿の捕獲数の増加にも苦慮する北海道

エゾ鹿の年間捕獲頭数も激増しています。

年度

捕獲頭数

1994年

  28,962頭

2021年(2022年9月5日時点速報値)

130,458頭

出典:北海道庁エゾシカ対策係調べによるエゾシカ捕獲数の推移

 

2010年以降、エゾ鹿の年間捕獲頭数は毎年10万頭を超えています。

それだけでなく、捕獲したエゾ鹿をどう処分するかという悩みもあります。

北海道の各自治体にとって、焼却による費用負担と、環境への悪影響は頭の痛い問題です。

しかし、現状、エゾ鹿を活用する方法は鹿肉として食べるのみで、皮と骨は産業廃棄物として焼却するしかありません。

2015年のデータでは、エゾ鹿の食肉利用率は捕獲頭数全体の17.6%ほどしかありませんでした。

何故こうなってしまったのか? 北海道におけるエゾ鹿の歴史

 

 

明治時代に始まった北海道開拓により、森林伐採とエゾ鹿の大量狩猟が行われました。

エゾ鹿の肉と皮の海外輸出は北海道開拓予算の貴重な収入源の一つだったのです。

そこに、明治12年(1879年)に発生した大雪がエゾ鹿の減少に拍車をかけました。

エゾ鹿の減少は、エゾ鹿をエサとしていたエゾオオカミにまで影響を及ぼしました。

食べるものがなくなったエゾオオカミが、農地や牧場を荒らすようになったのです。

当時、近代化を目指していた日本政府は、アメリカにあるような農場や牧場を北海道に作っていました。

そして、牧場の動物を守るという名目で、今度はエゾオオカミの大量駆除が始まったのです。

結果として、エゾオオカミは絶滅してしまいました。

その一方で、大きく数を減らしたエゾ鹿を保護するために、1889年にエゾ鹿の猟は禁止されました。

エゾ鹿の禁猟が解かれたのは1970年代に入ってからのことでしたが、エゾ鹿を取り巻く環境は昔と大きく変わっていました。

天敵のエゾオオカミがいなくなり、シカ皮とシカ肉の需要も大きく減少していました。

自然な弱肉強食のサイクルも、かつてのような人間たちからの需要もなくなっていたのです。

時を同じくしてエゾ鹿による農業被害が増えていきました。

害獣と呼ばれるエゾ鹿の歴史は、人間の都合に翻弄され続けたものだったのです。



参照サイト:

基本情報:

 

 

0 comments

Leave a comment