
CONCEPT
生きる・生命を感じる
Siknu Box の誕生
北海道には、この地にだけ生息する蝦夷(えぞ)鹿がいます。
一時は乱獲などによって急激に数を減らしたものの、人間による頭数調整で激増。
最近では、「害獣」のレッテルを貼られて駆除の対象となり、再び疎まれる存在になりました。
身勝手のサイクルで、生き物は嫌われたり求められたりします。
フェンスを壊し畑を荒らす蝦夷鹿は、このところ不動の嫌われポジション。ピンチ続きです。
そんな鹿の現状も知らずに、人生に疲れきった一人の男が、北海道はオホーツク地方にやってきました。
男はある日、ふと足元に多くの蝦夷鹿の角を見つけます。
鹿角は、畑で耕運機が巻き込んでしまうとかで、地元ではやっかい者。
こいつら、こんなにかっこいいのにな…
男は「こいつら」を大事に持ち帰りました。
これが、創鹿の初回作となった鹿角のカラビナ「TURA(トゥラ)」の、
そして「Siknu(シクヌ) Box」の始まりです。

蝦夷鹿の堂々たる美しい角に魅せられ、一心不乱に鹿角を削り、磨き、形をつくる日々。
男の手のなかで、角はたちまち輝き出します。
もう不要な命だなんていわれたくない、とでもいうように。
それはまぎれもなく、害獣として嫌われた鹿がのこした、生命のきらめきです。
どんな形にしてほしいのか、鹿角は言葉もなく語りかけてきます。
鹿角の声なき声がよけい胸にせまるのは、近ごろあちこちで生命が軽んじられているからなのか。
一頭ずつ違う蝦夷鹿の個性は、作品一点ずつからも十分に伝わるもの。
アイテムの色、柄、模様。大きさもそれぞれ違います。
男は鹿角から溢れる「生命」を大切にしまいたくて、TURA(トゥラ)を箱に入れ、誰かの手に届くことを願うようになります。
TURAのやさしい曲線や、「戦歴」としてのキズが伝える生命への執着。
それを感じ取ってもらえる日を、待つようになります。
ひとつ、またひとつとTURAが連なり、Siknu(シクヌ)Boxが増えていき、
やがて人知れず、「創鹿」の看板があがりました。
ある日、足跡のついていない雪原を駆け抜けていったのは、一頭の雄の蝦夷鹿。
力強く躍動する、しなやかな肢体。
静かな雪を蹴散らして駆け抜けた鹿の、あの強さを形作りたい。
思いを新たに、創鹿は今日も鹿の角を磨き、なるべき形に創作します。
いえ。なるべき形は、角が教えてくれます。
蝦夷鹿は、アイヌ神話のなかでは、神から遣わされた神聖な食糧なのだそうです。
疎まれて息絶えていく蝦夷鹿が、その美しく神聖な生命を伝えようとしている気がして。
その役目を託された気がして。
創作を通じて、直に触れた鹿の生命。
あるべき自然に思いをはせながら鹿角を形にして伝えていくことで、
あるべき地球に少しでも近づくなら。
引いては作家自身が、あるべき自分に辿り着けるなら。
生命を感じるSiknu(シクヌ)Box。
蓋を開けようとして指で触れると、
雪原を跳ねて駆けた、蝦夷鹿の足音が聞こえてきます。
聞こえる人にだけその蓋を開けてほしいと、創鹿は願います。